自然減とは?47都道府県すべてで出生数が死亡数を下回った意味
自然減とは、一定期間の死亡数が出生数を上回る状態です。 2025年は47都道府県すべてが自然減となり、2015年に自然増だった沖縄、愛知、東京、滋賀も自然減へ転じました(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)」、対象期間2025年1月1日から12月31日、および「平成27年(2015)人口動態統計(確定数)」)。
ただし、自然減はその地域の総人口が同じ割合で減ったことを意味しません。 出生と死亡だけを数える指標であり、転入、転出、外国人を含む国際移動は別に考える必要があります。
自然増減率は何を表すのか
地域ごとの自然減を比べるときは、人数だけでなく自然増減率も使います。 自然増減数は「出生数から死亡数を引いた値」、自然増減率は「年間の自然増減数を10月1日現在の日本人人口で割り、1,000倍した値」です(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」、2025年)。
全国の自然増減率は2025年に人口千対▲7.7でした。 これは日本人人口に対して0.77%の自然減に相当します(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」、2025年概数)。
実数と率は役割が異なります。 実数は出生と死亡の差が何人だったかを示し、率は人口規模が違う地域を同じ尺度で比べるために使います。 人口が多い地域では率が比較的高くても自然減の人数が大きくなる場合があるため、どちらか一方だけで判断すると地域の状況を取り違えます。
10年間で自然減はどこまで拡大したか
全国の日本人の出生数は2015年の1,005,721人から2025年の671,236人へ334,485人減り、減少率は33.3%でした。 一方、死亡数は同じ期間に1,290,510人から1,589,489人へ298,979人増え、増加率は23.2%でした(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」、2015年は再集計を反映した確定数、2025年は概数)。
この両方向の変化により、自然増減数は2015年の▲284,789人から2025年の▲918,253人へ広がりました。 自然減少数の絶対値は3.22倍となり、減少幅は633,464人拡大しています(厚生労働省、同概況、2015年確定数と2025年概数)。
自然減の拡大を「出生数が減ったから」だけで説明するのは正確ではありません。 出生数の減少と死亡数の増加が同時に進んだ結果であり、同じ資料だけでは年齢構成、出生行動、死亡率など各要因の寄与を分解できません。
都道府県差は何を示すのか
2025年の自然増減率が最も高かったのは沖縄の人口千対▲2.4で、東京▲4.0、滋賀▲5.0、愛知▲5.4、神奈川▲5.8と続きます。 低い側は秋田▲15.5、青森▲13.5、岩手▲13.2、山形と高知▲12.7、山口▲11.9でした(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)」統計表、2025年)。
2015年には、沖縄が人口千対プラス3.9、愛知がプラス0.2、東京と滋賀がプラス0.1で、この4都県だけは出生数が死亡数を上回っていました。 その4都県を含む全都道府県が2025年には自然減となったため、自然減は一部地域だけの現象ではなくなったと読めます(厚生労働省「平成27年(2015)人口動態統計(確定数)」および「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)」)。
一方、率の低さを地域の医療水準や暮らしやすさの評価に使うことはできません。 人口動態統計の死亡率は年齢構成を調整していない粗死亡率であり、高齢者の割合が高い地域ほど高くなりやすいからです。 年齢構成の違いは都道府県別の高齢化率の記事で確認できます。
総人口の増減とはなぜ一致しないのか
自然増減が数えるのは出生と死亡だけです。 総人口は、そこに国内の転入と転出、国外からの入国と出国による社会増減が加わって動きます。 自然減の地域でも流入が自然減を上回れば総人口は増え、反対に自然減へ転出超過が重なれば減少幅は大きくなります。
たとえば2025年の東京は出生85,064人、死亡138,377人で、自然増減数は▲53,313人でした(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)」統計表、2025年)。 この数字だけでは東京の総人口が増えたか減ったかは判定できません。 総人口の5年間の変化は国勢調査速報の記事、国内移動の収支は2025年の転入超過の記事のように、目的に合う統計と組み合わせて確認します。
数字を比べるときの注意点
第一に、2025年の値は月報年計の概数です。 確定数の実数は2026年9月、諸率は2026年12月に公表予定で、令和7年国勢調査人口を分母に使う再計算により都道府県別率も変わる可能性があります(厚生労働省「人口動態調査 結果の概要」、2025年分の公表区分)。
第二に、この集計の対象は日本で発生した日本人の事象です。 外国人を含む総人口の出生、死亡、移動をまとめた指標ではありません(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」、調査対象)。
第三に、2015年の値は後から判明した都道府県の報告漏れを反映した再集計済み系列と比べます。 古い公表資料に載った値と小幅に異なる箇所があるため、比較時には厚生労働省およびe-Statの更新済みデータを確認する必要があります(e-Stat「人口動態調査 人口動態統計 確定数 総覧」、2015年から2024年の再集計済み系列)。
まとめ
- 自然減は死亡数が出生数を上回る状態で、2025年は47都道府県すべてが該当しました(厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)」)。
- 全国の自然増減数は2015年の▲284,789人から2025年の▲918,253人へ広がり、出生数の減少と死亡数の増加の両方が影響しています(厚生労働省、同概況、2015年確定数と2025年概数)。
- 自然増減率は人口規模をそろえて地域を比べる指標ですが、年齢構成の影響を受けるため、医療水準や暮らしやすさの順位には使えません。
- 自然減と総人口減少は同じではなく、転入、転出、国際移動を含む社会増減を別の統計で確認する必要があります。