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発行済株式数と自己株式の違いは?実質株数とEPSへの影響を有報で読む

・ 約5分で読めます ・ 文責: 数字で読む編集部

発行済株式数が減っただけでは、1株当たり利益がどれだけ押し上げられたかは判断できません。 発行済株式数から会社保有の自己株式を引き、株式分割の影響をそろえたうえで、純利益とEPSの伸びを分けて確認する必要があります。

日本瓦斯の有価証券報告書を同じ基準で比べると、2022年3月期から2026年3月期までの実質株数は7.4%減でした。 一方、同期間の純利益は48.6%増、EPSは58.5%増です。 数値は日本瓦斯の2022年3月期から2026年3月期までの有価証券報告書に基づく連結数値と、期末株数から計算した値です。 この例では、EPSの増加を株数減だけで説明できません。

目次
  1. 発行済株式数と自己株式は何が違うのか
  2. 株式分割をまたぐ株数比較はどう直すのか
  3. 実質株数の減少はEPSにどう効くのか
  4. 有価証券報告書はどの順番で確認するのか
  5. まとめ

発行済株式数と自己株式は何が違うのか

有価証券報告書で株数を調べるときは、まず二つの数字を分けます。 発行済株式数は会社が発行した株式の総数であり、会社自身が保有する株式も含みます。 これに対し、自己株式は発行済みの株式のうち会社が保有している分です。

この記事では、期末発行済株式数から期末自己株式数を引いた値を実質株数と呼びます。 式は「実質株数=期末発行済株式数-期末自己株式数」です。 これは有価証券報告書の正式な指標名ではなく、株主側に残る期末株数を同じ方法で比べるための機械的な計算です。

日本瓦斯の2026年3月期は、期末発行済株式数が1億1,282万7,198株、期末自己株式数が約499万株でした。 差し引いた実質株数は約1億784万株です。 出所は2026年6月19日提出の日本瓦斯2026年3月期有価証券報告書にある「発行済株式」と「自己株式等の状況」で、自己株式数と実質株数は元ノートの百万株単位の集計値です。

自己株式を取得しても、消却するまでは発行済株式数が減らない場合があります。 発行済株式数だけを追うと、会社が保有する自己株式の増加を見落とすため、両方を確認します。 自己株式の取得や消却を資本配分全体の中で読む手順は、現金が多い会社の有報の読み方でも解説しています。

株式分割をまたぐ株数比較はどう直すのか

長期の株数データに大幅な減少が出たら、最初に株式分割と株式併合の有無を確かめます。 どちらも1株の単位を変えるため、調整前の株数をそのまま比べると、自社株買いによる減少と取り違えるからです。

日本瓦斯は2021年4月1日付で普通株式1株を3株にする株式分割を実施しました。 出所は同社の株主還元方針ページで、分割日と比率が記載されています。 2026年8月14日にEDINET DBの shares-change-5y で抽出された69.2%減という横断値は、有報の期末株数を同じ定義でつないだ結果と一致しませんでした。

同じ基準日で比べると、期末発行済株式数は2022年3月期の1億1,860万3,698株から2026年3月期の1億1,282万7,198株へ4.9%減りました。 さらに期末自己株式を引くと、実質株数は約1億1,649万株から約1億784万株へ7.4%減っています。 出所は日本瓦斯の2022年3月期と2026年3月期の有価証券報告書で、減少率は元ノートの機械的な試算です。

したがって、この期間の株数減を69.2%として扱うことはできません。 横断データは候補を見つける入口にはなりますが、分割調整の結果を個社の有価証券報告書と照合してから結論を出します。 株式単位の変更と実際の株数減を分ける計算は、株式併合と自社株買いの違いも参考になります。

実質株数の減少はEPSにどう効くのか

株数をそろえた後は、利益とEPS(1株当たり利益)を並べます。 EPSは利益を期中平均株式数で割るため、利益が増えなくても分母が小さくなれば上昇します。 ただし、期末の実質株数とEPSの分母は基準時点が違うので、両者を同じ数字として扱うことはできません。

日本瓦斯では、2022年3月期から2026年3月期に営業利益が127.86億円から212.78億円へ66.4%増え、親会社株主に帰属する当期純利益が99.72億円から148.15億円へ48.6%増えました。 EPSは86.24円から136.69円へ58.5%増えています。 いずれも日本瓦斯の各期有価証券報告書にある連結数値です。

純利益よりEPSの伸びが9.9ポイント大きいため、株数減はEPSを押し上げる方向に働きました。 しかし、営業利益の伸び66.4%はEPSの伸び58.5%を上回っています。 この事例を「自己株式の取得だけでEPSが増えた」と読むことはできず、事業利益の増加と分母の縮小を別々に評価する必要があります。

日本瓦斯の自己株式欄では、2022年3月期から2025年3月期までの4期に合計776万4,300株の消却が記録されています。 出所は各期の有価証券報告書にある自己株式欄です。 消却の継続は発行済株式数の減少とつながりますが、その事実だけで将来の消却数やEPSを予測することはできません。

有価証券報告書はどの順番で確認するのか

別の会社でも、次の順番なら株数とEPSを混同せずに追えます。

  1. 「発行済株式総数、資本金等の推移」で各期末の発行済株式数を確認します。
  2. 「自己株式等の状況」で同じ期末の自己株式数を確認し、実質株数を計算します。
  3. 比較期間中の株式分割と株式併合を調べ、株式の単位をそろえます。
  4. 「主要な経営指標等の推移」で連結の営業利益、純利益、EPSを同じ期間で比べます。
  5. EPSの期中平均株式数と、実質株数の期末値が一致しないことを前提に差を解釈します。

この読み方にも限界があります。 期末値から計算した実質株数では、期中のどの時点で自己株式を取得または消却したかを表せません。 信託が保有する株式などは開示上の扱いも確認する必要があります。

日本瓦斯のROEは2022年3月期の14.1%から2026年3月期の22.0%へ上昇しましたが、自己資本比率は46.7%から40.9%へ低下しています。 数値は同社の2022年3月期と2026年3月期の有価証券報告書に基づきます。 ROEの上昇率を、そのまま事業の収益性改善率とみなすこともできません。

なお、元ノートは現在の株価、PBR、配当利回り、時価総額を扱っていません。 この記事から判断できるのは過去の株数と利益の関係までであり、現在の企業価値や株価水準ではありません。

まとめ

本記事は開示資料の読み方を説明するもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。