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株式併合で発行済株式数はなぜ減る?自社株買いとの違いを有報で読む

・ 文責: 数字で読む編集部

企業の発行済株式数が10年前より9割以上減っていても、そのすべてを自社株買いの成果とは読めません。株式併合が行われると、株主全体の持分割合を変えずに表示上の株数が大きく減るからです。

住友大阪セメントの期末発行済株式数は、10年前の417,432,175株から2026年3月期の32,068,117株へ減っています。調整せずに計算すると92.32%減ですが、同社は2018年10月1日付で普通株式10株を1株に併合しました。有価証券報告書の株数を長期比較するときは、まず同じ単位へ直す必要があります。

株式併合とは何か

株式併合は、複数の株式を少ない株式へまとめる手続きです。住友大阪セメントの2018年3月期有価証券報告書には、普通株式10株を1株に併合する決定が記載されています。併合前の各株主の株数も、10株から1株という同じ比率で減る形です。

株数は10分の1になりますが、そのことだけで会社全体に対する持分割合は変わりません。全株主の株数が同じ比率で減るためです。株式併合による90%の株数減少は、会社が自己株式を買って消却した結果ではありません。

これに対し、自己株式消却は会社が保有する自社株を消滅させる手続きです。発行済株式総数が減り、ほかの条件が同じなら残る株式1株当たりの利益や持分に影響します。株式併合と自己株式消却は、どちらも発行済株式数を減らしますが、経済的な意味は異なります。

10年で92.32%減という数字の直し方

住友大阪セメントの10年前の発行済株式数417,432,175株を、10株から1株への併合後と同じ単位に直すと、理論上は41,743,218株です。これを2026年3月期の32,068,117株と比べると、減少率は92.32%ではなく23.18%になります。数値は2018年3月期と2026年3月期の有価証券報告書に基づきます。

つまり、表示上の92.32%減の大半は株式単位の変更です。ただし、併合調整後にも23.18%の減少が残ります。「株式併合を除けば株数は変わっていない」という読み方も正しくありません。

長期比較では、比較する両端のあいだに株式分割や株式併合がなかったかを有価証券報告書で確認します。データベースに「調整済み」と表示されていても、個社の計算値と一致するかを確かめる必要があります。今回の横断値は、調整前の417,432,175株と32,068,117株を割った値に一致していました。

実際に減った株数を有報で追う

併合後で単位がそろう2022年3月期以降を見ると、実質的な減少の進み方が分かります。期末発行済株式数は2022年3月期の37,243,217株から2026年3月期の32,068,117株へ減りました。4年間の減少は5,175,100株、率にして13.90%です。出所は各期の有価証券報告書にある「発行済株式総数、資本金等の推移」です。

減少は毎年同じではありません。2023年3月期は前年から2,913,700株減りましたが、2024年3月期は0株でした。2025年3月期は1,092,500株、2026年3月期は1,168,900株減っています。したがって、一定率で機械的に株数を減らしてきたわけではありません。

2026年3月期の1,168,900株については、住友大阪セメントの2025年12月19日付「自己株式の消却に関するお知らせ」でも確認できます。会社は消却前の発行済株式総数の3.52%を12月26日に消却すると公表し、その後の有報にある期末32,068,117株とつながっています。

株数減少はEPSにどう表れるか

1株当たり利益であるEPSは、利益を期中平均株式数で割って求めます。利益が同じでも分母の株数が減ればEPSは上がりますが、実際の決算では利益と株数が同時に動くため、両方を分けて見る必要があります。

住友大阪セメントでは、2022年3月期から2026年3月期に親会社株主に帰属する当期純利益が96.74億円から112.14億円へ15.9%増えました。同じ期間のEPSは262.77円から349.58円へ33.0%増えています。いずれも各期の有価証券報告書に記載された連結数値です。

元ノートでは、当期純利益をEPSで割って期中平均株式数を逆算しています。その結果は約3,681.5万株から約3,207.8万株への12.9%減でした。2026年3月期の利益112.14億円を2022年3月期の期中平均株式数で割るとEPSは304.60円となり、実績349.58円との差は44.98円です。

この順序で分解すると、2022年3月期からのEPS増加86.81円のうち約52%が株数減少による機械的な押し上げに当たります。ただし、利益を先に変えるか株数を先に変えるかで寄与額は変わります。44.98円や約52%は、企業が開示した独立の指標ではなく、有報数値を使った機械的な試算です。

期末発行済株式総数と、EPSに使う期中平均株式数は同じではありません。前者は決算期末時点の発行総数、後者は自己株式などを調整した期間平均です。自己株式を取得しても消却前なら、自己株式数は増えても発行済株式総数は減らない場合があります。

したがって、有報では「発行済株式総数、資本金等の推移」だけでなく、「1株当たり情報」と期末自己株式数も併せて確認します。株式併合や分割がある場合は単位をそろえ、期末値と期中平均値を混ぜないことが比較の前提です。

過去の株数減少から将来も同じ速度で減るとは推定できません。住友大阪セメントの2026年5月公表の中期経営計画は、2027年3月期から2029年3月期の総還元性向を3年平均50%以上としていますが、自己株式取得は株価水準などを勘案して機動的に実施する方針です。これは一定数の消却を約束する記述ではありません。

まとめ

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