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Sansanの営業利益はなぜ2.9倍?キャッシュフロー横ばいとの違い

・ 約6分で読めます ・ 文責: 数字で読む編集部

Sansanの営業利益が1年で2.9倍になったことは損益の改善を示しますが、現金を生む力まで2.9倍になったことを意味しません。 数値はSansan「2026年5月期有価証券報告書」(2026年8月19日提出、連結)に基づきます。

利益成長が続くかを判断するには、増益率だけでなく、解約率、契約単価、費用率、現金化、成長投資への配分を順に確かめる必要があります。

目次
  1. 営業利益2.9倍と現金横ばいは矛盾しない
  2. 継続課金が費用の伸びを上回ると利益率が上がる
  3. 利益の持続性は解約率、単価、資本配分で分かれる
  4. 2026年10月9日の決算で何を確認するか
  5. まとめ

営業利益2.9倍と現金横ばいは矛盾しない

最初に、損益と現金収支を同じ期間で分けて確認します。 Sansanの連結売上高は2025年5月期の432.02億円から2026年5月期の537.61億円へ24.4%増え、営業利益は28.00億円から81.85億円へ192.3%増えました。 営業利益率も6.5%から15.2%へ8.7ポイント上がっています。 出所はSansan「2026年5月期有価証券報告書」(2026年8月19日提出、連結)です。

同じ2026年5月期の調整後営業利益は84.27億円で、営業利益81.85億円との差は2.42億円でした。 調整後営業利益は営業利益に株式報酬関連費用と企業結合に伴う費用を加える会社定義で、出所は同有価証券報告書とSansan「2026年5月期決算短信」です。

しかし、連結営業キャッシュフローは2025年5月期の96.51億円に対し、2026年5月期は96.41億円で、0.10億円減りました。 出所は同有価証券報告書の連結キャッシュ・フロー計算書です。

増益と営業キャッシュフロー横ばいは両立するため、利益の質は一方だけで判定できません。 利益と現金の長期的な比べ方は、現金が多い会社の資本配分を読む手順も参考になります。

継続課金が費用の伸びを上回ると利益率が上がる

利益率が上がった機構は、継続課金の売上と先行費用の伸びの差にあります。 2026年5月期の売上総利益は前期比26.3%増え、売上高の24.4%増を上回りました。 会社は広告宣伝費率と人件費率の低下を増益要因に挙げており、出所はSansan「2026年5月期有価証券報告書」と同社の決算開示です。

顧客が契約を続ければ、過去に獲得した契約からの売上に新規契約分が重なります。 その売上の積み上がりが広告宣伝費や人件費の増加を上回ると、増えた売上総利益の一部が営業利益として残り、営業利益率が上がります。 これが、この事例における営業レバレッジです。

継続の裏付けは主力サービスの解約率に表れています。 2026年5月期の直近12カ月平均月次解約率は「Sansan」が0.55%、「Bill One」が0.34%でした。 同じ期の「Bill One」売上高は136.79億円で39.7%増えました。 数値はSansanの2026年5月期決算開示にある主要KPIとサービス別業績に基づきます。

低い解約率が利益につながる理由は、名刺や請求書のデータが営業や経理の業務に組み込まれるほど、他サービスへのデータ移行と社内の再教育に負担が生じ、既存契約が残りやすくなるためです。

一方、営業キャッシュフローでは前受金が40.44億円増えたものの、その他資産が23.74億円増え、税金の支払いもありました。 出所はSansan「2026年5月期有価証券報告書」の連結キャッシュ・フロー計算書です。 損益で営業レバレッジが表れても、運転資本と納税が同じ期の現金増加を相殺し得ることが、利益2.9倍と現金横ばいをつなぐ経路です。

利益の持続性は解約率、単価、資本配分で分かれる

投資家が次に切り分けるのは、顧客数の増加と価格決定力です。 2026年5月期の「Sansan」は契約件数が12,199件で14.0%増えた一方、契約当たり月次ストック売上高は20.8万円で1.0%下がりました。 「Bill One」は契約件数5,188件、契約当たり月次ストック売上高23.7万円で、後者は2.2%上がっています。 出所はSansanの2026年5月期決算開示にある主要KPIです。

この違いから、「低解約率だから単価も上げられる」とは判断できません。 既存顧客が残ることと、一つの契約から得る売上が増えることは別だからです。 Sansanの利益成長を評価する際は、契約件数だけでなく、主力サービスの単価低下をBill Oneの件数と単価の同時成長が補えるかを見ます。

費用計画も条件として扱います。 2027年5月期の会社予想は売上高が18.5〜21.5%増、人件費が約12%増、広告宣伝費が約8%増で、計画どおりなら調整後営業利益率は15.7%から20.0〜22.5%へ上がります。 出所はSansan「2026年5月期決算短信」(2026年7月13日公表)の連結業績予想です。 これは確定した将来ではなく、営業レバレッジが働くための前提です。

利益をどこへ振り向けるかも株主資本の効率を左右します。 2026年5月期は投資有価証券を28.16億円取得し、子会社株式を14.65億円追加取得しました。 同じ期の減損損失は2.31億円で、出所はSansan「2026年5月期有価証券報告書」(連結)です。 有価証券報告書の「事業等のリスク」に減損が新しく現れたため、営業利益の拡大と投資先の価値低下を別々に追う必要があります。

この読みの前提は、Bill Oneの売上成長率が会社予想下限の28%程度を保ち、両主力の月次解約率が1%未満にとどまり、人件費と広告宣伝費の伸びが売上成長を下回ることです。 反対に、2027年5月期の調整後営業利益率が20%へ届かない、Bill Oneの売上成長率が28%を下回る、Sansanの解約率が1%へ近づく、または減損が営業利益の伸びを継続的に打ち消す場合、この読みは外れます。 基準値はいずれもSansan「2026年5月期決算短信」と同有価証券報告書に基づきます。

2026年10月9日の決算で何を確認するか

次の確認日は、会社のIRカレンダーに掲載された2026年10月9日の2027年5月期第1四半期決算です。 決算説明資料の「主要KPI」と「連結業績見通し」を開き、次の順に照合します。

  1. Bill OneのMRR成長率と売上成長率が、会社予想の下限である28%程度を保っているか。
  2. Sansanの契約当たり月次ストック売上高が、前期の20.8万円から下げ止まるか。
  3. SansanとBill Oneの月次解約率が、前期の0.55%と0.34%から大きく上がっていないか。
  4. 調整後営業利益率が、通期予想の20.0〜22.5%へ向かう費用率になっているか。

数値の基準時点と定義は、Sansanの2026年5月期決算開示に基づきます。 四つを並べれば、増益が顧客維持と単価によるものか、広告宣伝費や人件費を抑えた一時的なものかを切り分けられます。

次回の有価証券報告書では、「事業等のリスク」と連結財務諸表の投資有価証券、のれん、減損損失を確認します。 営業利益率が上がっていても、買収や出資の価値低下が増えれば、資本配分まで含めた利益の持続性という読みは弱まります。

まとめ

本記事は開示資料の読み方を説明するものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。