数字で読む暮らしと経済暮らしの数字を、一次データで読む

ERIの営業利益が2.4倍になったのはなぜ?法改正特需の持続性を有報で読む

・ 約5分で読めます ・ 文責: 数字で読む編集部

ERIホールディングスの利益急増は、建物の数が増えたからではありません。 法改正によって1棟に必要な審査が増え、手数料改定も重なった結果、売上の伸びが費用の伸びを上回りました。

2026年5月期の建築確認件数は6万8,867件で、前期より116件減りました。 一方、建築確認の売上は35.63億円から47.02億円へ31.9%増え、全社の営業利益は20.45億円から49.43億円へ2.4倍になりました(ERIホールディングス「2026年5月期決算説明資料」および2026年8月26日提出の有価証券報告書、2026年5月期)。

「法改正直後だけの特需」と決める前に、審査単価と資格者による処理能力が次の決算でも保たれるかを確認する必要があります。

目次
  1. 建築確認件数が減っても利益が増えた理由
  2. 利益の持続性を支える資格者と全国網
  3. 投資家は住宅着工件数より何を見るべきか
  4. 次の決算で確認する場所
  5. まとめ

建築確認件数が減っても利益が増えた理由

利益が増えた機構は、件数と1件当たり売上に分けると見えます。 建築確認売上を交付件数で割った試算は、前期の5.16万円から6.83万円へ32.2%増えました(ERIホールディングス「2026年5月期決算説明資料」、2025年5月期と2026年5月期、入力ノートによる試算)。

2025年4月から、すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務付けられ、木造戸建てなどで構造審査を省略できた「4号特例」も縮小しました。 そのため、制度が増やしたのは住宅着工件数ではなく、1棟から発生する省エネ審査と構造審査です。 省エネ適合性判定件数は6,299件から1万9,018件へ201.9%増えました(ERIホールディングス「2026年5月期決算説明資料」、2025年5月期と2026年5月期)。

この増収が利益へ伝わったのは、売上の伸びが費用の伸びを上回ったためです。 全社売上高は25.0%増えたのに対し、営業費用は11.5%増にとどまり、営業利益率は10.4%から20.0%へ上がりました(ERIホールディングスの2026年8月26日提出有価証券報告書、2025年5月期と2026年5月期)。 件数が横ばいでも、1件の審査量と単価が増えれば、追加売上が利益率を押し上げます。

利益の持続性を支える資格者と全国網

法改正は審査需要を作りますが、その需要をどの会社が売上にできるかは別の問題です。 指定確認検査機関には、技術力、公正中立性、資格者数などの要件があり、指定は5年ごとに更新されます(日本ERIの2025年5月期有価証券報告書)。

日本ERIは全国33支店を持つ唯一の指定確認検査機関で、グループの確認検査員と副確認検査員は757人、確認検査の市場シェアは約14%です(日本ERIの2025年5月期有価証券報告書およびERIホールディングスの会社開示、基準時点は各資料の記載時点)。 128の指定機関があるため顧客が乗り換えられないわけではありませんが、繁忙時にも複雑な申請を全国で処理するには、資格者と拠点の蓄積が要ります。

確認検査と住宅性能評価の関連事業は、2026年5月期に売上187.92億円、営業利益42.89億円、利益率22.8%となり、全社売上の76.1%を占めました(ERIホールディングスの2026年8月26日提出有価証券報告書、2026年5月期)。 一方、資格者は2024年から2025年に710人から757人へ増えています(同社の2025年5月期有価証券報告書)。

審査量が資格者の増加を上回れば、納期の長期化か人件費の増加として表れます。 この制約の読み方は、受注増と人手不足を有報で読む方法にも通じます。 制度上の参入要件だけでなく、増えた審査を利益率を落とさず処理できるかが、利益の持続性を分けます。

投資家は住宅着工件数より何を見るべきか

この読みの前提は、手数料改定後の単価が保たれ、資格者を増やしながら審査を処理できることです。 会社は2027年5月期に売上270億円、営業利益53.30億円、営業利益率19.7%を予想し、2028年5月期目標を売上300億円、営業利益55億円へ上方修正しました(ERIホールディングス「2026年5月期決算説明資料」、2026年5月期公表時点)。 会社自身は、利益率が法改正前の10%台前半へすぐ戻る計画を置いていません。

ただし、会社予想は持続性を保証しません。 投資家が見る対象は、住宅着工件数だけでなく、建築確認の1件当たり売上、確認検査と住宅性能評価の関連事業の利益率、資格者数、営業キャッシュフローです。 2026年5月期の営業キャッシュフローは49.45億円、投資キャッシュフローは13.12億円の支出で、差額は36.32億円でした(ERIホールディングスの2026年8月26日提出有価証券報告書、2026年5月期)。 利益には現金が伴っていますが、子会社取得に5.54億円を使っているため、買収後の収益も資本配分の確認対象になります(同資料、2026年5月期)。

法改正特需かどうかは、需要の有無ではなく、高い単価と利益率を処理能力が支え続けられるかで判断します。 この読みが外れるのは、確認件数が横ばいのまま1件当たり売上が低下し、連結営業利益率が15%を割る場合です。 営業キャッシュフローが純利益の8割を下回る状態が続く場合も、利益の質を見直す必要があります。 15%と8割は会社開示の目標ではなく、本記事で置く反証条件です。

次の決算で確認する場所

次の確認機会は、2026年9月30日の2027年5月期第1四半期決算です(ERIホールディングス「IRカレンダー」、入力ノート確認時点)。 決算資料とEDINETの「経営成績」「セグメント情報」で、確認検査と住宅性能評価の関連事業の売上と利益率、人件費、営業キャッシュフローを確認します。

同時に、会社の月次報告で建築確認と省エネ関連の件数を見ます。 件数が減っても1件当たり売上と利益率が保たれていれば、制度変更後の高い審査量を収益化できているという読みが残ります。 反対に、単価と利益率がそろって低下したら、法改正直後の滞留や手数料改定による押し上げを一時要因として強く見る必要があります。

確認する順番は、件数、1件当たり売上、資格者数、利益率、営業キャッシュフローです。 この順番なら、需要が減ったのか、処理能力が足りないのか、採算だけが悪化したのかを分けられます。

まとめ

本記事は公開資料の読み方を説明するもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。