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米通商法301条の関税はどう決まる?上乗せ方式と合計キャップの違い

・ 文責: 数字で読む編集部

「追加関税12.5%」と「合計税率12.5%」は、同じ負担を意味しません。 既存関税に12.5%を足すのか、既存関税を含む合計を12.5%までに抑えるのかで、輸入時の税率は変わるからです。

米通商法301条に基づく関税を読むときは、税率の数字だけでなく、対象国が上乗せ方式合計キャップ方式のどちらに分類されたかを確かめます。 さらに、同じ301条に基づく別の調査を混ぜないことも必要です。

米通商法301条の関税とは

通商法301条に基づく措置では、米国が調査対象と措置内容を定め、対象国や品目に関税を課すことがあります。 ただし、「301条関税」という呼び名だけでは実際の負担率は決まりません。 措置ごとに対象、税率、既存関税との重なり方が異なるためです。

元ノートが扱った強制労働を理由とする措置では、国や地域が複数の区分に分けられました。 10%または12.5%を既存関税へ加える区分がある一方、MFNを含む合計税率に10%または12.5%の上限を置く別枠もあります。 数字が同じでも、計算の出発点が違います。

この違いを無視して「対象国の製品には一律12.5%が追加される」と読むと、キャップ対象国の負担を過大に見積もります。 反対に、上乗せ対象国をキャップ方式で計算すれば、負担を過小に見積もることになります。

上乗せ方式と合計キャップ方式の違い

上乗せ方式では、すでに適用される関税率に新しい301条関税を足します。 既存関税率をA、新しい税率をBとすれば、基本的な読み方は「A+B」です。 元ノートでは、中国とブラジルについて、新しい12.5%が既存の301条関税へ追加される扱いだと整理しています。

一方、合計キャップ方式では、既存関税を含む合計に上限を設けます。 日本向けの措置は、自動車、鉄鋼、アルミなどの既存関税を含め、合計税率を12.5%に抑える別枠として整理されています。 新しい12.5%を機械的に足す方式ではありません。

ここで「キャップなら、すべての品目が必ず12.5%になる」と考えるのも正確ではありません。 キャップは上限の説明であり、元ノートは品目別、原産地別の既存税率を確認していないからです。 実際の負担を求めるには、対象国の区分に加え、対象品目に適用される既存関税を別に確かめる必要があります。

同じ301条でも別の調査は分けて読む

制度名が同じでも、調査の目的が違えば一つの税率表にはまとめられません。 元ノートの強制労働を理由とする301条措置とは別に、鉄鋼、自動車、半導体を対象とする「構造的過剰生産能力」の301条調査が進んでいました。

2026年7月25日時点で、後者の税率は未公表でした。 したがって、強制労働を理由とする措置の合計キャップが、別の調査にもそのまま適用されるとは確認できません。 一方の措置で上限が示されたことを、すべての301条関税の上限と読み替える根拠はないということです。

記事や企業資料で「301条関税」とだけ書かれている場合は、調査名、発効日、対象品目の三つを照合します。 この三つが一致しなければ、同じ措置の説明とは限りません。

2026年7月の措置ではどう区分されたか

制度が実際に使われた例を確認します。 2026年7月24日に発効した強制労働を理由とする措置は60カ国と地域を対象とし、10%を上乗せする17カ国、12.5%を上乗せする38カ国のほか、EUと台湾にはMFN込み合計10%、日本、韓国、スイスにはMFN込み合計12.5%の別枠を設けました。 対象数と区分の出所はUSTRファクトシートとGlobal Trade Alert、発効日と日本向けキャップの出所はNippon.comおよび時事通信です。

関税の影響は、企業の損益でも既存の増減要因と分けて読みます。 トヨタ自動車は2026年3月期の米関税による通期減益影響を1兆3,800億円と開示したとresponse.jpが2026年5月に報じました。 同じ期の営業利益は3兆7,662億円で前期比21.5%減でしたが、この減少額だけを関税額と同一視できません。 売上高と営業利益の出所は、2026年6月10日提出の有価証券報告書を基にしたEDINETデータです。 元ノートも、為替、原価低減、販売数量などの要因別内訳は未確認としています。

自分で制度を確認する手順

税率を二次記事の見出しだけで判断せず、次の順で一次資料へ戻ります。

  1. USTRの当該措置のファクトシートで、調査の名称と発効日を確認します。
  2. 同じファクトシートの対象国一覧と税率の説明を見て、「既存関税への追加」なのか「MFN込みの合計」なのかを区別します。
  3. 別の301条調査が併記されていないかを確認し、調査名と対象業種が違う情報を分けます。
  4. 企業への影響を見る場合は、EDINETで該当企業の有価証券報告書を開き、連結財務諸表の売上高と営業利益を確認します。
  5. 関税影響額は企業の決算説明資料にある関税影響の記述と照合し、営業利益の前年差をそのまま関税額とみなしません。

元ノートの企業例では、EDINETの提出者コードE02144、2026年6月10日提出の2026年3月期有価証券報告書が確認の起点です。 ただし、品目別と原産地別の既存税率を示す一次資料は元ノートで特定されていません。 その部分まで確認できない場合、実効税率の計算は「未確認」として止めるのが妥当です。

まとめ

この記事の元データ