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家計調査の名目と実質とは?消費支出の増加率を正しく読む方法

・ 文責: 数字で読む編集部

家計調査で「消費支出が増えた」と報じられても、家計が前年より多くの財やサービスを買ったとは限りません。支払った金額を示す名目と、物価変動を除いた実質では、同じ年でも増減の向きが逆になるからです。

総務省統計局の「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果」では、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり1か月平均314,001円でした。前年から名目で4.6%増えた一方、実質では0.9%増です。家計の変化を読むには、円額、名目増減率、実質増減率を分けて見る必要があります。

家計調査の名目と実質とは

名目増減率は、世帯が実際に支払った金額が前年からどれだけ変わったかを示します。値上がりした商品を前年と同じだけ買えば、購入量が変わらなくても名目支出は増えます。

実質増減率は、その名目増減率から物価変動の影響を取り除いた指標です。総務省統計局の「家計調査 用語の解説」によると、実質増減率は「(100+名目増減率)÷(100+対応する消費者物価指数の変化率)-1」に100を掛けて求めます。

消費支出の実質化には、消費者物価指数の「持家の帰属家賃を除く総合」を使います。家計調査の支出には、実際の受払いを伴わない持家の帰属家賃が含まれないためです。2025年は名目4.6%増から物価変動3.7%の影響を除くと、実質0.9%増になりました。いずれも総務省統計局の2025年平均結果にある公表値です。

ただし、実質増減率は「2025年価格で314,001円使った」という意味ではありません。前年からの支出変化を物価調整した率であり、月平均額そのものは各年の価格で集計した名目額です。

2025年の消費支出は2000年と比べて増えたのか

長期の円額だけを見ると、2025年の314,001円は2000年の317,328円を3,327円下回ります。単純計算では約1.0%低い水準です。出所は総務省統計局がe-Statで公表する家計調査長期時系列表で、対象は全国の二人以上の世帯、金額は1世帯当たり1か月平均です。

この比較を「生活水準が約1%下がった」と読むことはできません。2000年と2025年では物価だけでなく、世帯人員、世帯主の年齢、購入する品目の構成や品質も変わっており、長期時系列表の月平均額はそれらを固定していないからです。

同じ長期時系列表では、2000年から2025年までの26年間で名目増加が13年、名目減少が13年でした。実質では増加が10年、減少が16年です。円額が増えた年のすべてで、物価を除いた支出も増えたわけではありません。

月平均額が期間中で最も低かったのは2020年の277,926円で、実質増減率も期間中最大のマイナス5.3%でした。その後は2022年に290,865円、2023年に293,997円、2024年に300,243円、2025年に314,001円となっています。これらも同じ家計調査長期時系列表の年平均値です。

名目が増えても実質が減るのはなぜか

名目と実質が逆方向に動くのは、支出額の伸びを物価上昇率が上回るときです。2023年は名目1.1%増でも実質2.6%減、2024年は名目2.1%増でも実質1.1%減でした。総務省統計局の2025年平均結果によると、2025年は名目4.6%増、実質0.9%増となり、3年ぶりに実質でも増加しました。

たとえば、同じ商品が値上がりすれば、買う量を減らしても支払額が増える場合があります。反対に、価格が下がる局面では、名目支出が減っても実質では増えることがあります。実際、家計調査長期時系列表では2002年に名目1.0%減、実質0.1%増、2010年に名目0.5%減、実質0.3%増でした。

それでも「実質増加なら、すべての世帯が豊かになった」とは言えません。公表値は調査対象世帯を集計した平均であり、費目ごとの値動きや各世帯の支出構成は異なります。2025年の実質0.9%増も前年からの反転は示しますが、1年だけで持続的な回復を確定する数字ではありません。

長期データを見るときの注意点

家計調査の対象範囲は、数字の意味を左右します。今回の系列は全国の二人以上の世帯で、勤労者世帯、無職世帯、世帯主が個人経営者や法人経営者などの世帯を含みます。単身世帯は含みません。家計調査は統計上の抽出方法で選ばれた全国約9,000世帯を毎月調査する標本調査です。

調査方法の変更にも注意が要ります。2018年1月に家計簿が改正されたため、2018年と2019年の名目増減率、実質増減率には改正の影響を調整した変動調整値が使われています。一方、月平均額は原数値です。総務省統計局の2025年平均結果が注意書きを置くとおり、円額から計算した増減率と公表増減率は一致しません。

さらに、2025年1月には収支項目分類が改定されました。総額の「消費支出」は長期表で接続されていますが、食料や光熱費などの内訳を名称だけで長期比較するときは、分類が同じかを別に確かめる必要があります。

年平均と月次も混ぜられません。この記事の数値は2000年から2025年までの年平均であり、月ごとの季節性を調整した短期指標ではありません。足元の変化を知りたい場合は、同じ対象世帯と同じ実質系列で月次結果を確認する必要があります。

まとめ

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