高齢夫婦無職世帯の生活費はいくら?2025年の収入、支出、不足額
高齢夫婦無職世帯の生活費は、2025年平均で月263,979円でした。 実収入は月254,395円ですが、税や社会保険料などを引いた後の可処分所得は221,544円となり、消費支出との差は月42,434円の不足です。 いずれも総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要」による、65歳以上の夫婦のみの無職世帯についての1世帯当たり1か月平均の名目額です。
この不足額を、そのまま各世帯の毎月の取り崩し額や老後資金の目安にすることはできません。 家計調査が示すのは該当世帯全体の平均であり、個々の世帯の住宅費、医療や介護の支出、資産、年金額までは表していないためです。
2025年の収入と支出はどうなっているか
家計の流れを読むには、実収入から消費支出を直接引かず、途中にある非消費支出を確認します。 用語は次の関係です。
- 実収入:年金や恩給、仕送り金、保険金、財産収入などを含む収入です。
- 非消費支出:税や社会保険料など、自由に使えない支出です。
- 可処分所得:実収入から非消費支出を引いた、消費に回せる金額です。
- 家計収支差:可処分所得から消費支出を引いた金額です。家計調査の表では「黒字」と呼ばれ、マイナスなら平均上の不足を表します。
これらの定義は、総務省統計局「家計調査 用語の解説」と「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要」に基づきます。
2025年平均の内訳を、この順番で並べると次のようになります。
- 実収入は月254,395円で、このうち社会保障給付は228,614円、実収入に占める割合は89.9%でした。出所は総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要」です。
- 非消費支出は月32,850円で、実収入から差し引いた可処分所得は月221,544円でした。出所と基準時点は同資料の2025年平均です。
- 消費支出は月263,979円で、可処分所得を月42,434円上回りました。平均消費性向は119.2%です。出所と基準時点は同資料の2025年平均です。
したがって、「収入254,395円に対して支出263,979円なので、差は9,584円」と読むのは正しくありません。 収支差の計算では、実収入から非消費支出を先に引くためです。 家計調査が示す不足額は、可処分所得221,544円と消費支出263,979円の差である42,434円です(総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要」、2025年平均)。
不足額は近年どう変化したか
同じ現行定義で比べられる直近の動きでは、収入より消費支出の増加額が大きくなっています。 2023年平均から2025年平均までに、実収入は月244,580円から254,395円へ9,815円、4.0%増えました。 一方、消費支出は月250,959円から263,979円へ13,020円、5.2%増えています。 出所は各年の総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕年平均結果の概要」で、いずれも1世帯当たり1か月平均の名目額を単純比較したものです。
この期間の家計収支差は、2023年平均がマイナス37,916円、2024年平均がマイナス34,058円、2025年平均がマイナス42,434円でした。 出所は総務省統計局の各年平均結果の概要で、物価や標本構成の違いを調整した数値ではありません。 この比較から確認できるのは平均額の動きであり、物価、年金改定、世帯構成のどれが不足額を変えたかは特定できません。
少し長い期間を見る場合も、感染症と給付金の影響を受けた2020年平均は基準にしにくい年です。 同年の家計収支差は1,111円の黒字でしたが、実収入には特別定額給付金を含む特別収入があり、消費支出には外出や営業の自粛などの影響があります。 出所は総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2020年平均結果の概要」です。
そこで2020年平均を除き、同じ現行定義の2021年平均と2025年平均を算術比較すると、実収入は月17,819円、7.5%増え、消費支出は月39,543円、17.6%増えました。 不足額は月23,909円拡大しています。 出所は総務省統計局の2021年と2025年の年平均結果の概要で、物価差を除いていない名目額の比較です。
10年間を一本の推移として見られない理由
2016年から2025年までの公表値はありますが、10年間を同じ対象の連続系列として扱うことはできません。 2016年から2019年までの対象は「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」、2020年から2025年までは「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」です。 総務省統計局の2016年から2025年までの各年結果概要で確認できるとおり、妻が60歳から64歳までの世帯の扱いが異なります。
旧定義では、不足額が2016年平均の月54,711円から2019年平均の月33,269円へ縮小しました。 出所は総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2016年、2017年 結果の概要」と2018年、2019年の年平均結果の概要で、金額は1世帯当たり1か月平均の名目額です。 ただし、この変化と2020年平均以降の水準を直接つなぐと、対象変更の影響まで家計収支の変化として数えてしまいます。
調査方法の変更もあります。 家計簿は2018年1月に改正されており、2018年をまたぐ原数値の差には調査方法変更の影響が含まれ得ます(総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2018年平均結果の概要」、2018年平均)。 長期比較では、対象定義の前後を分け、同じ区間の中でも名目額の単純比較であることを明記する必要があります。
平均不足額を老後資金へ置き換えない
月42,434円という2025年平均の不足は、同じ世帯が毎月その金額を預貯金から取り崩した記録ではありません。 家計調査の表は世帯ごとの不足額の分布や、同一世帯の資産残高の変化を示していないからです。 出所は総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要」で、対象は65歳以上の夫婦のみの無職世帯です。
「無職世帯」は、世帯主が無職で、年金、恩給、仕送り金、保険金、財産収入などにより家計を営む世帯を指します。 それでも有業人員は各年0.08人から0.09人で、世帯主以外の有業者などがわずかに含まれ得ます。 この定義と数値は総務省統計局の2016年から2025年までの家計調査結果概要によります。
家計調査は層化3段抽出による標本調査です。 現行設計では二人以上の調査世帯が8,076世帯で、各世帯は6か月で交替します。 高齢夫婦無職世帯はその一部なので、全体平均より標本誤差が大きくなり得ます(総務省統計局「家計調査の概要」、2026年8月5日閲覧時点の現行調査方法)。
個別の生活設計へ使うなら、統計の平均額をそのまま必要額にせず、自世帯の可処分所得と消費支出を同じ定義で並べるのが出発点です。 住宅費、医療や介護の支出、資産、年金額、地域、家族構成が平均対象と異なれば、必要な補填額も変わります。
まとめ
2025年平均の高齢夫婦無職世帯は、実収入が月254,395円、可処分所得が月221,544円、消費支出が月263,979円で、家計収支差は月42,434円の不足でした(総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要」)。
過去と比べるときは、金額が名目平均額であること、2020年平均に一時的な給付と消費抑制の影響があること、2019年平均と2020年平均の間で対象定義が変わったことを分けて扱います(総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕各年平均結果の概要」)。 平均不足額は老後資金の答えではなく、自世帯の収入と支出を点検するための比較材料です。