子どもの貧困率とは?2024年11.0%の意味と大人一人世帯44.7%の読み方
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、日本の子どもの貧困率は2024年所得を基にすると11.0%です。 ただし、この数字は「生活に必要な金額を一律に下回る子どもの割合」ではありません。 世帯人数を調整した可処分所得が、その年の所得分布から決まる貧困線に届かない17歳以下の割合です。
2024年所得では、子どもがいる現役世帯のうち大人が一人の世帯に属する人の貧困率が44.7%、大人が二人以上なら6.7%でした。 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」による数値で、両者には38.0ポイントの差があります。 この差を読むには、率の定義、比較基準、統計だけでは分からない範囲を分ける必要があります。
子どもの貧困率11.0%は何を表すのか
子どもの貧困率を理解するには、まず世帯の所得を人数に応じて調整します。 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査 用語の説明」では、世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割った金額を等価可処分所得としています。 税金や社会保険料を差し引いた後の所得を、そのまま世帯人数で割る計算ではありません。
次に、等価可処分所得を低い順に並べ、中央に位置する人の金額を求めます。 その中央値の半分が貧困線で、貧困線に満たない世帯員の割合が相対的貧困率です。 厚生労働省の同調査では、17歳以下に対象を絞った割合が子どもの貧困率となります。
2024年所得の等価可処分所得の名目中央値は277万円、貧困線は138万円でした。 同年の相対的貧困率は15.0%、子どもの貧困率は11.0%です。 いずれも厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」の表11に掲載された、2024年1月1日から12月31日までの所得に基づく数値です。
したがって、11.0%は絶対的な生活費の不足を直接数えた数字ではありません。 所得分布の中央を基準にするため、貧困線自体も所得の動きに応じて変わります。 厚生労働省の同資料は「2025年調査」ですが、貧困率が表す所得年は2024年である点にも注意が必要です。
大人が一人の現役世帯はなぜ44.7%なのか
家族構成別の数字は、子どもがいる現役世帯を対象にします。 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」では、現役世帯を世帯主が18歳以上65歳未満の世帯とし、大人を18歳以上、子どもを17歳以下と定めています。
2024年所得による現役世帯の貧困率は全体で9.0%でした。 大人が一人なら44.7%、大人が二人以上なら6.7%で、厚生労働省の同資料における単純差は38.0ポイントです。 この割合の分母は世帯数ではなく、それぞれの世帯に属する大人と子どもを合わせた世帯員です。
「大人が一人」は母子世帯だけを指す分類ではありません。 父と子どもで暮らす世帯なども、定義に当てはまれば含まれます。 そのため、厚生労働省の同資料にある44.7%を母子世帯だけの貧困率として引用すると、対象範囲を狭く読み違えることになります。
一方、38.0ポイントの差だけから「大人の人数が貧困の原因である」とは判断できません。 厚生労働省の表は家族構成別の割合を示しますが、就業時間、所得源、扶養負担などの影響を分離した因果分析ではないからです。 確認できるのは、2024年所得の集計で家族構成による大きな差があったことまでです。
2021年からの低下をどう比較するか
同じ所得基準で直近の動きを比べると、子どもの貧困率は2021年所得の11.5%から2024年所得の11.0%へ0.5ポイント低下しました。 相対的貧困率も15.4%から15.0%へ0.4ポイント低下しています。 出所は厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」と「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」で、いずれも新基準による比較です。
しかし、すべての家族構成で率が下がったわけではありません。 子どもがいる現役世帯のうち、大人が二人以上の世帯は2021年所得の8.6%から2024年所得の6.7%へ低下しましたが、大人が一人の世帯は44.5%から44.7%へ0.2ポイント上昇しました。 これらも厚生労働省の両調査に掲載された新基準の数値です。
厚生労働省の両調査にある0.2ポイントの上昇だけで、状況の悪化を断定することもできません。 公表された概況表だけでは、この変化が標本誤差の範囲かどうかを判定できず、世帯構成や回答状況の変化も分離できないためです。 全体の低下と大人一人の世帯の動きを別々に確認するのが適切です。
1985年からの推移は基準変更で分けて読む
長期推移には2018年の所得定義変更があります。 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、新基準では旧基準の可処分所得から自動車税など、企業年金の掛金、仕送り額を差し引きます。 2018年所得は旧基準と新基準が併記され、2021年所得以降は新基準だけが掲載されています。
基準変更の影響は同じ年の数値で確認できます。 2018年所得の子どもの貧困率は旧基準で13.5%、新基準で14.0%でした。 相対的貧困率も旧基準の15.4%に対し、新基準では15.7%です。 いずれも厚生労働省の同資料が示す2018年所得の値であり、実態が同じでも定義によって率が変わる例です。
したがって、1985年から2024年までを定義変更のない一本の系列として比べることはできません。 長期の動きは1985年から2018年までの旧基準と、2018年から2024年までの新基準に分けます。 新基準に限れば、子どもの貧困率は2018年所得の14.0%から2024年所得の11.0%へ低下しています。 出所は厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」で、起点と終点の単位はいずれも世帯員に占める割合です。
貧困率だけでは分からないこと
相対的貧困率は所得分布上の位置を示す指標で、暮らしの困難をすべて測るものではありません。 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査 用語の説明」によると、算出する所得には現金で受けた社会保障給付を含む一方、医療や教育などの現物給付は含みません。
この率だけでは、世帯の資産と負債、地域ごとの生活費、貧困線から所得がどれだけ不足しているかも分かりません。 2024年所得の貧困線が名目138万円であることも、低所得層の購買力が改善した証拠にはなりません。 138万円は厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」による名目額で、物価を調整した実質額ではないためです。
調査自体も全世帯を数えたものではありません。 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査 調査の概要」によると、所得票と貯蓄票は2,000単位区の約3万世帯を対象とし、調査客体27,901世帯のうち17,500世帯が回答し、16,921世帯が集計されました。 標本誤差と無回答の影響があり得るため、小幅な変化を単独で断定材料にするのは避けます。
まとめ
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、2024年所得の子どもの貧困率は11.0%で、等価可処分所得が名目138万円の貧困線に満たない17歳以下の割合です。
- 厚生労働省の同資料によると、子どもがいる現役世帯では、大人が一人の世帯に属する人の貧困率が44.7%、大人が二人以上では6.7%でした。
- 厚生労働省の2022年調査と2025年調査によると、2021年所得から2024年所得に子どもの貧困率は0.5ポイント低下しましたが、大人が一人の世帯は0.2ポイント上昇しています。
- 2018年に所得基準が変わったため、長期推移は旧基準と新基準に分けて確認します。
- 貧困率から資産、負債、地域差、物価を踏まえた購買力、困窮の深さまでは判断できません。